当記事にはプロモーションが含まれます。
『虐殺器官』。著者は伊藤計劃氏。ジャンルとしてはSF小説です。
一時期、『Project Itoh』として彼の作品シリーズが劇場アニメ化されたりもして話題になりました。
SF小説と言うとやはり「小難しい」と感じる人は多いと思いますし、一般的な読者層の反応は薄いイメージがあります。
要は巷でメディア化されがちな作品みたく「普段本を読まない人にも刺さる」とは言いづらいジャンルと言うか。
そんな中でも、伊藤氏の数少ないオリジナル長編作品3作すべてがアニメ化されたなんて、割とすごいことだと思うんですよね。
ちなみに『虐殺器官』は、「ゼロ年代最高のフィクション」とも称えられています。
- 価格: 792 円
- 楽天で詳細を見る
実を言うとわたしはSF作品は好きではあるものの、特に小説となると食指が動きづらいというのはあります。
例えば、SF小説界では言わずと知れた作家、フィリップ・K・ディック氏。
『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』でも有名ですし、映画の『トータル・リコール』『マイノリティ・リポート』の原作も彼の作品です。
そんなディック氏の作品を読んではみたものの、やはり中々ついていくことができず…。
映像作品としては大好きなのですが、小説となるとどうにも哲学さが増してしまうので「ウッ」と来てしまうのです。
おそらく、一般的な読者層が読む本の中にSF小説を選択肢に入れづらい理由と同じところですよね。理解するのが難しい、と言う。
そんな中、先のプロジェクトの件もあって少しずつ話題になっていた伊藤計劃氏。
イラストを担当していたのが当時気になっていたイラストレーターさん(アニメの『PSYCHO-PASS』にハマっていたので…主題歌繋がりで…)だったこともあり、手に取ってみました。
初めて読んだ時、びっくりしたんですよね。
小説としてはSF作品をほとんど読んだことがないので前述のディック氏くらいしか比較対象がないのですが、それでもこんなSF小説があるのかと思ったんですよ。
要は「面白いな!?!?!?」と思ったわけです。
それがわたしと伊藤計劃作品の出会いでした。
そしてその時には既に、伊藤氏は亡くなられていました。あまりには早すぎではありませんか……。
もし彼がまだ健在で、小説を書き続けていたとしたら、彼の作品は全て買い続けていた自信があります…。
***
『虐殺器官』は伊藤氏のデビュー作品です。
9.11以降の世界。テロや虐殺が増え、世界はそれらの対応に迫られていました。
科学技術も発達し、先進国では認証システムを導入することで個人の行動を逐一トレースする時代に。
また軍事技術も時代に合わせて変化し、人工筋肉やナノマシンを活用した装備などが使われるようになりました。
それに加えてアメリカは、世界各地で起こるテロや紛争を収束させるための暗殺任務を請け負う部隊も新たに創設したのです。
主人公クラヴィス・シェパードもその部隊の一員でした。
今作の大筋としては「ある一人の男」が世界中で発生し続ける紛争に関わっている、という情報を得て彼を追い、抹殺(ないし逮捕)しようとする話なのですが。
暗殺を請け負う主人公の罪の意識、それを最新技術によって鈍らせ心の負担を軽減させることへの虚無感や不安のようなもの、そういった主人公の心境についても深く描かれています。
そんな中で明かされる、「虐殺を引き起こす器官」の真実とは——。
かなり文学的、哲学的要素も含まれるので、きちんと考察や解説しようと思ったら個人的には一苦労だと思いつつ…。
でも難しいんですけど、読ませる力があると言うか。引き込まれるんですよね。文章に。
エグい表現や際どい表現も多々ありますが、目を逸らせないんですよ。この世界から。
これ何でだろうなぁ…。もう何度も読み返していますが、何でこんなに面白いんだろうといつも思うんですよ。
文章の書き方?構成力?設定?
難しいのは難しいんですよ。SF小説にありがちな哲学的な要素も含まれているのですが。
でも面白いんですよねぇ…。
作中で書かれる最新技術についても、本当にこの先実現しそうな妙なリアリティもあったりして、わたしたちが今現在暮らしているこの世界の延長線のような気さえするのです。
それもまた目が逸らせない要因なのかも。
「ゼロ年代最高のフィクション」——正にその通りだと思います。
***
余談ですが、SF小説と言えば巷では『三体』もめっちゃ話題になってますよね。
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』も映画化が決まってじわじわ来ているような。
どっちも読みたいと思いつつ…。
▼最近ではこんな雑誌も出ていて、サブスクでチラ読みしたのですが…ほんとSFの時代も来てるんちゃう!?なんて思っちゃいます。
[rakuten:book:21304987:detail]
わたしもこれを機にもっとSF小説に手を出してみようかなぁ。