これまで、当ブログではクレイグ版ボンド4作品について綴ってきました。
今回は5作目……最終作である『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』についてです。
クレイグ版ボンド作品は、これまでの007作品とは少し違って「人間味のあるボンド」でした。
誰かを愛し、そして別れ……「MI6の諜報員」だけではなく「ジェームズ・ボンド」としての人生も描かれてきたのです。
そのクレイグ版ボンドの壮大な幕引きとなったのが、最後の作品『ノー・タイム・トゥ・ダイ』です。
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▼これまでに書いたクレイグ版ボンドの記事はこちら。
映画の内容に触れています。ご注意ください。
『ノー・タイム・トゥ・ダイ』では、マドレーヌの知られざる過去から始まります。
それはスペクターを憎む者との邂逅でした。
前作『スペクター』のラストで彼女と共にMI6を去ったボンドは、スペクターの亡霊、そしてスペクターへの復讐者の両方から追われることとなるのです。
しかもヴェスパーとの過去に別れを告げ、マドレーヌとの新たな一歩を踏み出そうとしていた矢先に。
今作『ノー・タイム・トゥ・ダイ』では、クレイグ版ボンド1作目『カジノ・ロワイヤル』からのフラグ回収もきちんとなされていきます。
はじまりであるヴェスパーとの過去。
CIAのフィリックスとの友人関係。
それらが「まさかここで」と言わんばかりの展開を見せてくれます。
過去4作から続いた因縁、そして愛する人との別れ。
全てが綺麗に終わりを迎えるのが、この『ノー・タイム・トゥ・ダイ』です。
わたしは『ノー・タイム・トゥ・ダイ』を初めて観た時、あまりに綺麗な幕引きに溜息がこぼれたのを覚えています。
1作目からこれまでを経てようやく人生を手にしたかと思いきや、再び選択を迫られるジェームズ。
そしてラスト。
「時間が欲しい」と言うマドレーヌに、「時間はいくらでもある」と返して空を見上げるジェームズの姿に涙が止まりませんでした……。
ここはぜひ、実際に観て欲しいシーンです。
長く続くシリーズもので、ここまで潔い結末を迎える作品はそう無いと思います。
しかもクレイグ版007は全部で5作。
全てが繋がっていて、その上でのこの最終作『ノー・タイム・トゥ・ダイ』。
直訳すれば「死ぬ時間はない」——つまり「死は終わりではない」「あなたの中で生き続ける」といったメッセージだとわたしは解釈しています。
そういった点も含めて、見事な幕の引き方だと思っています。
次のボンドはまだ決まっていませんが、今後の「007」シリーズがどうなっていくのか……今後も要注目ですね。