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人間の不完全さを、うつくしいものを通して描き切ったような漫画『宝石の国』

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宝石の国』。

講談社から出ているアフタヌーンコミックスなのですが、ネット上では「地獄の漫画」との呼び声も高い作品です。

著者は市川春子先生。この『宝石の国』が初の連載作品なのだそう。

 

連載は今年の春に終了しており、最終巻である13巻が11/21に発売になります。

それに伴い、11/18より3日間限定で1〜12巻までが無料配信されていたので、わたしも読んでみました。

1〜2巻くらいは読んだことがあったのですが、それ以降(いわゆる「地獄」と言われている展開)は未読なので、戦々恐々としながら読んだのですが……。

 

 

 

正直な話……

まあ正直な話、何も知らない人が一気読みする分には「地獄」感は低めなのではと思います。

鬱展開は鬱展開なので「どうしてこうなった?」な部分はもちろんあるのですが、それよりもやはり「どゆこと?」感も強いと言いますか。

何も考えずに一気読みすると、突飛な設定も相まって「結局何を伝えたかったかったんだろう?」といった気持ちになるのではないでしょうか…。

 

『宝石の国』はどういう話なのか?

・あらすじ

世界観としては、かつて「にんげん」が暮らしていたと言われる世界の話です。

明示はされていませんが、海や月が登場するので地球をモデルとした世界だと思っていいのではないでしょうか。

 

そんな世界に暮らすのは、宝石の体を持つ人型の生物たち。

彼らは月からやってくる「月人」と呼ばれる存在に狙われ、不定期な襲撃に遭っていました。

 

なぜ「月人」は宝石たちを襲い、その体(宝石)を奪っていくのか?

はっきりとしたこともわからぬまま、自分たちを守るためにただ戦いの日々を送っていたのです。

 

・特異な体質を持つ主人公、フォスフォフィライトを中心に描かれる物語

主人公であるフォスフォフィライト(通称フォス)は硬度的に脆い体を持ち、戦闘にも参加できず役割を与えられないまま日々を過ごしていました。

そんな中、月人の襲撃の際に落ちたカタツムリのような生物、アドミラビリスに取り込まれたことで彼の運命が変わります。

 

そこからはフォスの特異体質もあって、かつての面影がなくなるほどに体の欠損と補完を繰り返し……世界の真実が明かされていくのと同時に、いわゆる「地獄」と呼ばれる展開へと向かっていくのです。

 

人間の不完全さを、うつくしいものを通して描き切ったような漫画

結局その言葉に尽きるのでは、と個人的には思います。

最終的にフォスが迎える結末を鑑みると、明らかに彼だけ不条理が過ぎるんですよね。

 

ただ、むしろわたしたちがそう思ってしまうこと自体がいわゆる「人間的」な部分なのか…などと考えると、そういう人間の「不完全さ」「愚かさ」「不条理さ」を、宝石や月人といった「うつくしいとされるもの」たちを通して表現したような、そんな漫画なのかな…と思ったりして。

 

結局のところ、我々は「何をもって"しあわせ”とするのか?」

 

それを問いかけられているような、そんな気がします。

 

***

 

画風もあいまって、抽象的な雰囲気の作品です。

うつくしい宝石たちの活躍が見たい方は、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。