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物悲しくも最後まで惹きつけられる『少女終末旅行』(全6巻)

 

新潮社より出ているバンチコミックス『少女終末旅行』。全6巻。

終末世界で2人の少女が上層階を目指して旅する物語です。

 

終末世界と言っても、既に争いは世界の崩壊という形で終わっており、人間の生き残りもほとんどいない状態です。

なので世界の終わりにありがちな、道中で少女たちが略奪に遭ったり襲撃に遭ったり大怪我を負ったり…という精神的にキツいような描写はなく、ただ食料を探して世界を旅しながら上を目指す、比較的落ち着いたストーリーです。(もちろん崩壊している故の道中トラブルなどはありますが)

 

 

 

実は何故これを手に取ったか、当時のことはよく覚えてないんですよね…。

アニメが始まった時に1巻だけ買った形跡があるので、恐らくアニメ化に伴い気になって購入してみたのだと。そして6巻が出た後に残りを一気買いした模様。

 

終末と言えど、基本的には日常っぽい描写なんですよね。

「ケッテンクラート」という半装軌車に乗り、崩壊した世界や知らない文明、過去の遺物の間を進み、食料を探しつつ1日を終える。そんな感じです。

 

主人公の少女たち、チトとユーリは幼少期に“おじいさん”に拾われた過去を持ち、親の存在や血縁者の有無などに関しては明かされていません。

もちろん世界が世界ですのでちゃんとした教育を受けた様子もなく、過去に何らかの組織に所属していたらしい“おじいさん”から教えられたサバイバル術や、彼が持っていた本などからぼんやりとした知識を得ていたようです。

“魚”をほとんど知らないことからも、チトやユーリが生まれた時には文明や生き物、戦争といったものはすでに終わってしまっており、残された文明の名残や非常食に縋って生き繋いでいたのではと予想できます。

 

チトたちが暮らすこの世界(大陸?)は大昔に作られた多層構造の馬鹿でかい都市らしく、彼女たちは“おじいさん”に言われてその上層部を目指しています。

上層部に何があるのかもわからないまま、過去の遺物の合間を縫ってただただ上を目指すチトとユーリ。

上層部に辿り着いた時、2人は——?

 

***

 

この作品の何がすごいって、こんな世界に生きながらも絶望を感じさせないんですよね、この2人。

これまでの暮らしのせいなのでしょうか…世界や文化、普通の人間の生き方について何も知らないからこそ、絶望も知らない…そんな感じもします。ある意味幸いなのかもしれない…。

 

ただ生きていて、空腹が満たせればそれで充分。

持たない(執着しない)からこそ特別失うものも何もない、といったところでしょうか。

 

 

そんな絶望する様子のない2人ではありますが、見ている側としてはどうしようもない物悲しさを感じさせる作品です。

世界や文明についても、未来の地球をベースにしたファンタジーっぽい世界観で、崩壊してはいるもののその独特な世界観を味わうこともでき、SF作品としても面白さを感じられると思います。

 

6巻完結と読みやすい長さでもあるので、気になる方はぜひ。