のてライフ

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謎多き絵師の冒険譚「風神雷神 上」

「楽園のカンヴァス」を読んでからというもの、原田マハさんの筆致にのめり込んでいます。

著書を少しずつ読み進めているのですが、今回は図書館で見かけて衝動”借り”してしまった「風神雷神」上巻を読み終えたので、記憶が新しい内に一旦綴っておきます。色々と並行読書をしているもので…。

今回は読みたい欲望に抗えず図書館で借りましたが、いずれきちんと購入したいものですね…。わたしに本を大人買いできるほどのお金と収納場所をください…。

books.rakuten.co.jp

 

内容に触れていますのでご注意を。

 

相変わらずフィクションとは思えないほど濃密な物語です。今作は謎多き絵師、俵屋宗達(たわらやそうたつ)について書かれています。

宗達と言えば本の表紙にもなっているこの絵が有名ですね。国宝《風神雷神図屛風》です。歴史や絵画に詳しくなくとも、この絵は何となく見たことが…という方も多いのではないでしょうか。

 

そんな宗達ですが、実は彼に関する史料はそう残されておらず、作品の制作年だけでなく、本人の生没年すらもはっきり分かっていないのだそうです。

今作ではそんな謎の多い俵屋宗達を、原田マハさんなりに史実と絡めて描いています。

 

はじまりは例の如く、現代。京都国立博物館で宗達について研究する女性の前に、マカオ博物館の学芸員が現れるところから始まります。

彼はマカオで見つかった、「風神雷神」が描かれた西洋絵画を彼女に見せます。ただ風神雷神と言えども、西洋の絵画として描かれたものである以上宗達とは関係なさそうに見えました。しかし絵画と共に持ち込まれた古文書に、天正遣欧少年使節の一員・原マルティノの署名と、「俵…屋…宗…達」の四文字が残されていたのです。

ここから回想と言う名の物語が始まります。

 

今回は時代背景や登場人物について、日本史と言えど細かく知らない部分も多かったのでさらっと調べてみました。宗達自身がそもそも謎が多いということですし…どこまでが史実でどこからがフィクションかというのを知りたかったので。

上巻については、宗達が少年でありながら絵師としての才能を見出される話です(ここから既にもうフィクションなのですが)。そしてその人生(と、恐らく風神雷神図屏風)に大きく関わってくるのが天正遣欧少年使節、という内容。

この天正遣欧少年使節は実在したものです。1582年にローマに派遣された日本人のキリシタン少年たちの使節団のことなんですが、その中にはキリシタンではない日本人少年もメンバーに含まれていたらしいんですね。ただキリシタンではなかったからこそ、その個人の詳細までは残されていないようなのですが…そこで原田マハさんは、この謎の部分に謎の多い宗達を当てはめて物語を作るという。相変わらず上手いこと絡めておられる…本当にすごいな。

上巻はローマに向かう途中で終わるので、これからどうなるのか。下巻が楽しみです。