のてライフ

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「楽園のカンヴァス」を通して世界を見つめる

 

個人的に好きなものは多々ありますが、その中でも「アートミステリ」というジャンルが割と好きな部類に入ることに最近気が付きました。

と言っても、これまでは主に映画ばかり観ていたのですが。お馴染み「ダ・ヴィンチ・コード」シリーズ、最近なら「岸部露伴 ルーヴルへ行く」。

…あれ。言うても少ないなと思ったのは内緒である。

 

そういうわけで、小説でも映画でも何でもいいから他にないかと検索した時に、真っ先に出てきたのが原田マハさんの著書でした。

そうでした。原田マハさんはとにかくアートに関する本もたくさん書かれているのです。有名な方だし知識としてはあったけれど、何だかんだでこれまで触れたことがなくて。

さてどこから手を付けようかと悩んだ結果、とりあえずはこれかな、ということで「楽園のカンヴァス」を読みました。

books.rakuten.co.jp

 

まず驚いたのは、冒頭から大原美術館(岡山県倉敷市)が出てきたこと。

「ん?なんか聞き覚えのある美術館だな?」と思いつつ読み進めたら、やっぱり倉敷。そうだ、子どもの頃行ったとこだ!と。

個人的な話だけれど、実はわたしは倉敷にちょっとした縁があったりします。だから余計テンションが上がるという。まさかリアル美術館が出るとは思わなかったので…。

 

そんな大原美術館ですが、しばらく読んでいけば過去の回想へと切り替わり。懐かしい美術館でのお話はほぼ最初の方だけで、物語としてはは回想メインでした。

ちょっぴり残念ではあったけれど、しかし、その回想がこの物語の本編なわけで。これがまたのめり込むほど面白くて、この先どうなるのだろうと逸る気持ちを抑えながらページを捲っていく。

そうして読み進める内に「ああ、良いな」と思ったのです。芸術に携わる人々の、純粋な想いの何とうつくしいことか。

 

アートを愛する、ということは、この世界を愛する、ということ。

——「楽園のカンヴァス」原田マハ 著(敬称略)

作中の、この一文にどうしようもなく胸を打たれました。

 

「芸術」とは「作品を鑑賞する」だけではない。

世界を見つめ、感じ、そうした人々の手でつくり出された芸術作品。それを理解し、愛するということは、確かに世界を理解し、愛するということになり得るんだ。

芸術を通して自分の「在り方」を問われているような。そんな気がしました。

 

もちろん、ミステリーとしても非常に面白かったです。史実にうまいことフィクションを織り交ぜてあり、登場人物たちの思惑やらも含めれば、読み進めるほどにドキドキが止まらない。

そしていざ読み終えてみれば、タイトルですら「これは秀逸だなあ」と思うわけで。正直ノンフィクションでもあり得るんじゃないかってくらい、ドラマティックな物語でした。これはぜひ実際に読んでみて欲しいです。

素敵な本でした。ありがとうございました。