「0メートルの旅」読みました。
この本はたまたまX(Twitter)で、著者の岡田さんと編集の今野さんが、三年前の初著書がついに重版されたと喜んでおられるのを見て興味を持った本でした。
そもそも最初に見かけたのは編集の今野さんの呟きの方で、そこにリンクされていた、この本を出版するにあたってのあれこれを記したnoteを何気なく読んだのが始まりです。
この本がつくられたのは、コロナ禍の真っ只中。今野さんのnoteによると、社内で企画を通し執筆に入ったタイミングで例のウイルスが猛威をふるい始めたとのこと。
世間では自粛自粛と声高に騒がれ、少しでも遠出したなどと呟こうものなら炎上待ったなしだったあの頃。そんな時に旅の本を出版するなんて、わたし自身「あ〜…それは何というタイミング…」と思ったぐらい。
思い返せばあの頃はわたしも仕事やプライベートが中々に混乱を極めていたけれど、それでも岡田さんと今野さんの当時の心境は想像するに余りあると思うのです。(特に、岡田さんの結婚式の話など…)
それでも、結果としてこの本は出版された。もはやその事実だけで込み上げるものがあると言うものです。
そういうわけで、衝動買いしました。
ちなみに今野さんのnoteで初めて知った「寿司屋のクーポンを三年間記録した」という話がものすごく気になったのも衝動買いの理由だったり。
最初は普通の(と言っても内容的にはだいぶ面白いし変わっているけれど)の旅行記だなと思いつつ読み進めていたものの、これが国内に入った辺りから「旅行記」の様相が変わってくるのです。
渡航が難しい、とある国に触れたくてサッカーのサポーターになった話。
連休の人混みを避け都内で最も検索数の少ない駅に行く話。
わたしが気になっていた寿司屋のクーポンの話。
古地図を使って巡る近所の話。
出来なかった結婚式についての後日談。
そして、エアロバイクで日本縦断をした話。
旅とは、そういう定まった日常を引き剥がして、どこか違う瞬間へと自分を連れていくこと。そしてより鮮明になった日常へと、また回帰していくことだ。
——「0メートルの旅」岡田悠 著(敬称略)
「旅とは何か?」ということについて、岡田さんはそう綴っています。
読み終えた後、思わず「ハァ〜〜!」とうるさいため息がこぼれました。帯に書いてあるロンブー淳さんのコメント通り、この本の全てが物語のようだった。
ひとつひとつの話はさほど長くなく、ギャグか?と思うほど笑ってしまう部分もあるのに、読み終えてみればあまりに壮大な読了感。
でもこれは岡田さんの人生のほんの一部分に過ぎないのだろうと思うと、何と言うか、積み上げた経験値が違うなぁとただただ感心するばかりです。
(前略)この本が、そんなどこかの誰かの0メートルの旅につながれば嬉しい。
——「0メートルの旅」岡田悠 著(敬称略)
岡田さんのこの言葉がじわりと胸に沁みました。
***
わたしの「0メートルの旅」は何だろう?
わたしも旅行は好きだけれど、一年に一回くらいは国内のどこかに行くかな程度。
正直な話、家に引きこもって映画を観たり本を読んだり絵を描いたりしている方が圧倒的に多いのです。だからわたしにとっての「旅」は主に「芸術に触れること」だろうかと何となく思ったり。
映画を通じて壮大な世界に浸り、読書を通じてあらゆる人の思考に触れ、絵を描くことで自分の内面へと潜る。
それがわたしの「0メートルの旅」なのかな。
とても良い本でした。ありがとうございました。
※これは以前、別所で別名義にて投稿していた記事を加筆修正したものです。