わたし自身、これまで色々と本は読んできましたが…やはり紙の本は場所を取るので、変わる生活スタイルや趣味嗜好に合わせて手放すことも多いんですね。
(こういう時、わたしがお金持ちだったらなぁ…と思うものです)
けれど、一冊だけ。絶対に死ぬまで手元に置くと決めている大好きな本があります。
それがこちら↓
『1カ月のパリジェンヌ』です。発行は2007年で、著者は平澤まりこさん。
一応商品情報としてリンクを貼ってはいますが、さすがにもう何処も新品では手に入らないと思います…。
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この本とわたしの出会いは遡ること専門学生時代。(十何年前…)
当時よく足を運んでいた、とある大型書店で見つけました。
元々洋画好きの影響もあって海外に憧れを抱いていた当時の私は、海外の旅行ガイドや旅行エッセイ本なんかをよく読んでいました。
さすがに実際に海を渡るにはお金も無く、かと言ってバックパックを背負い身一つでという勇気もなかったので、個人的には本を開いて卓上旅行と洒落込むぐらいが丁度良かったのです。
『1カ月のパリジェンヌ』はそんな時にたまたま見つけた本でした。
何よりもまず装丁に惹かれたんですよね。鮮やかなターコイズブルーの帯が巻かれた、段ボールっぽい外箱が付いているんです。
「何だこれ? 写真集か何かかな?」と思って手に取れば、中の本はこれまたシックなピンク(パープル?)の表紙。そして驚くべきことに、本なのにまるでリングノートのようにリングで綴じられているんです。
ページはフルカラー。ざらざらとした厚めの紙で、まるで海外の古い文献を読んでいるような手触り。(羊皮紙的な…)
イラストや写真、手書きで書かれた文字なんかも豊富で、本というよりはリアル日記帳のようなブックデザインです。
それまでリング綴じの本なんて見たことがなかったですし、その後書店にも長いこと勤めましたが、ここまで凝った装丁の本はついぞ見かけませんでした。
もちろん探せば無くは無いと思いますが…全国流通の一般書でこんな装丁は割と珍しいと思います。
よくこんなひと手間もふた手間もかかっていそうな本を、本体価格1,800円で出版出来たな…とずっと思っているくらい。実際出版する側としてはどうだったのだろうかと地味に気になっています。
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まあそれはさておき。この『1カ月のパリジェンヌ』はタイトル通り、著者の平澤まりこさんがフランス・パリで1カ月を過ごすお話です。
しかし旅行エッセイというよりは、正にパリジェンヌのようにフランスで日常を過ごしてみた平澤さんの日記といった感じ。
ホームステイ先の家族との生活や交流。
パリの型押し職人への弟子入り。
アパルトマンでのひとり暮らし。等々。
旅行ガイドには書かれていない、パリのリアルが垣間見える文章は軽快で読みやすく、それでいて情景がありありと目に浮かぶようで、読んでいてとてもワクワクするのです。
すっかりこの本の虜になりましたし、こんな風にパリで過ごすのっていいな、なんて思ったりもして。
購入してから十何年経ちますが、今でもちょっと疲れた時や気分転換したい時、あるいは外国の風を感じたいなと思った時に、大事に読み返してはパリに想いを馳せています。
さすがに経年によるシミだったり、あるいはわたしが落っことして付いてしまった凹みだったりもあるのですが…それすらも逆に愛おしく思えるような本なのです。わたしと人生を共にしている感。
若かりし頃の海外への憧れは、未だにわたしの心の中で燻っていて。そして、きっとこれからもそうだと思っているんですよね。
今の世の中に在っても、わたしにとってはパリへの旅なんて未だ夢の世界なので…。
この本は、初めて手にしたあの頃の思い出とわたしの憧れも詰まっている、わたしにとって特別な本です。